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人口減少社会の切り札コンパクトシティとは?

地方都市は、高度経済成長期に拡大した結果、都市だけではなく郊外にも住宅が増え、逆に中心市街地が空洞化する現象が現れました。人口減少時代になり、再びコンパクトシティが見直されています。

コンパクトシティとは?

東京の都心部のように人口が集中した都市では、地価が高騰したことで人の暮らしが郊外に向かました。郊外型の商業施設もたくさん建設され、郊外であっても都市と同じような便利な暮らしができるようになりました。その後、郊外型の店舗の出店が相次ぎ、逆に都市の中心部が空洞化する「ドーナツ化現象」が起きました。都市部では人口減少により活気がなくなり、職場はあるものの人が住まないようになりました。
そこで都心部にも活気を取り戻し、市街地から歩いて行ける範囲を生活圏として、住みやすい街づくりを目指す動きが高まりました。1970年代にも同じ考え方が登場しましたが、近年のコンパクトシティでは、自動車や自転車などの交通手段なども含めて新しい発想が登場しています。

 

コンパクトシティが生まれた背景

人口の減少と高齢化が主な原因です。コンパクトシティ構想により、人口を集積し、密度の高い街作りを目指すものです。市街地の拡大を抑制して行政や商業施設などの都市の機能を集約し、人口密度を高い状態に保つことで人口減少による都市の機能が低下したり、郊外からの不便なアクセスも解消できます。郊外化を抑制し、市街地を小さく保つことでコミュニティを再生し、住みやすい環境を作ることを目指してコンパクトシティの考え方が生まれました。

海外にもあるコンパクトシティ

コンパクトシティは、生活に必要となる諸機能が手の届く便利なところにあり、効率性を重視して人口の減少に対しても持続できる都市を目指しています。アメリカのニューアーバニズムやイギリスのアーバンビレッジなどがよく似た考え方です。

アメリカのニューアーバニズム

ニューアーバニズムは、1980~90年代の北米で生まれた都市設計の考え方です。
鉄道駅を中心に商業施設や住宅地が周囲に存在する都市モデルです。自動車ではなく、鉄道やバスを基本とした公共交通です。
具体例として、フロリダ州シーサイドが有名で統一された美しい街並みやホテル、店舗などがあります。

イギリスのアーバンビレッジ

1992年にイギリスで提唱された考え方です。住民が参加し公共交通を利用し、職住近接の生活ができる都市構想のことです。さまざまな階層や仕事を持つ人が住み、持続できる都市のコミュニティを生み出します。

 

コンパクトシティのメリットやデメリット

コンパクトシティは、新しい考え方ではありません。これまで無秩序だった都市計画を再考し、人口減少や少子高齢化、経済や環境に対する問題を解決できる考え方として再び注目されています。

コンパクトシティのメリット

コンパクトシティでは、お住まいに近い場所に公共施設や商業施設が集まりアクセスが便利になります。自動車ではなく、徒歩や自転車、バス、鉄道が移動手段となります。
効率化されたことにより、行政サービスが低コストで提供でき、人口減少による税収減にも対応できます。
階層や世代を問わずいろいろな人が住むことにより、コミュニティが形成され、仕事をする人もお年寄りも助け合いながら生活する姿に戻ります。
郊外の戸建て住宅に住み、電車やクルマで職場に行く通勤スタイルは、時間を浪費しています。コンパクトシティにより、移動時間や通勤時間が短縮でき、自由な時間が増えます。

コンパクトシティのデメリット

コンパクトシティにより、居住地域が制限されてしまいます。環境保全地域を分けてしまうことで住みたいエリアに住めなくなる可能性があります。今お住まいのエリアから移住しない方もいるので、必ずしもコンパクトシティの考え方に全員が賛同するわけではないようです。
人が多く集まると住環境が悪化します。騒音や日照の問題、治安の悪化なども問題です。ゆったりとした静かな暮らしを好む人にはよく思われないでしょう。
都市部においては、医療や介護の施設や人員が不足します。人が集まれば、医師や看護師、医療・介護施設を増やす必要があり、十分な医療・福祉サービスを提供できない可能性が高まります。
不動産価格は上昇しますが、コンパクトシティから外れたエリアは資産価値が下落します。中心部に住みたくても低収入であれば賃貸住宅に住むしかない可能性もあります。

 

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日本で推進されるコンパクトシティ

日本でもすでにコンパクトシティが始まっています。札幌市、青森市、仙台市、富山市、神戸市、北九州市では政策として公式に取り入れられています。コンパクトシティは都心回帰の流れを受けて自然発生的に始まっています。

コンパクトシティの先駆け富山市

自動車の利用が多い富山市。マイカー通勤が当たり前の都市です。そのため、公共交通が衰退し、市街地が低密度化していました。高齢化によるコンパクトシティ構想の動きにより、徒歩で利用できる生活圏を公共交通でつなぐ構想が生まれ、実際に運用されています。ライトレール(路面電車)は、廃線になったJRよりも利用者が増加し、通勤以外の利用客も増えました。バスとも接続し、自動車の利用を減らし、二酸化炭素の排出が減り環境モデル都市にも指定されています。住宅助成制度を使い郊外から都心にも人が戻りました。

失敗事例として取り上げられる青森市

青森市は、市街地のドーナツ化現象に悩まされていました。人口減少と少子高齢化にも歯止めがかからず、コンパクトシティ化の流れは必然的に起こりました。雪の多い地域だけに除雪費用が財政を負担します。新幹線の新青森駅との接続を強化することがポイントとなりました。
青森駅を中心にして、インナー、ミッド、アウターの3つの区域に分けます。市街地はインナー、住宅エリアはミッド、アウターは自然環境を保護するエリアに定めています。駅周辺には図書館や複合商業施設を官民共同で建設しましたが、賃料不足で経営が悪化しました。当初は話題にもなった複合商業施設ですが、運営会社の財政危機により、市が債務を買い取るまでになっています。青森市の場合は、課題がたくさん残っておりまだ持続できるコンパクトシティではありません。今後、どう課題を改善していくかが鍵です。

ネットワーク型コンパクトシティの宇都宮市

これからコンパクトシティを目指す関東でも人口の多い都市宇都宮市は、ネットワーク型コンパクトシティを目指したまちづくりを目指しています。
農用地や森林を保全し、質の高い住宅地を形成、工業地は都市圏の発展をリードします。生活圏内で行ける商業や業務地を作り、市街地の無秩序な拡大を抑制します。新交通システムとして宇都宮ライトレールが着工しており、沿線の市街地に人を集めて、車による交通渋滞を緩和する予定です。宇都宮市の特徴を活かしたネットワーク型コンパクトシティが各都市から注目されています。

 

問題点の多いコンパクトシティ

全国各都市で始まっているコンパクトシティですが、青森市のようにすでに始まったものの、うまくいっていないところもあります。コンパクトシティ化に向けた問題点についてまとめました。

中心市街地と郊外の存在

国土交通省でも、コンパクトシティ化を目指す政策を推進しています。中心市街地の衰退が顕著だからです。
しかし、すでに拡大してしまった郊外は、環境もよく建物や敷地の広さも十分です。平成の大合併などで誕生した広域自治体は、人口や面積が増えたために、郊外に住む人の利便性を損なう恐れがあります。賛成する住民ばかりではないからです。郊外よりも中心市街地を優遇する政策も旧自治体の中心街は逆に廃れていく恐れもあり、広域の自治体であるほどコンパクトシティ化により、郊外の取り扱いが難しくなります。

商業施設や商店街の共存

既存の商店街は、シャッター通りになってしまったり、ストロー効果が出たりします。タイアップが失敗すればコンパクトシティ化が失敗します。中心となる駅の駅ナカ、駅前の商業施設、中心市街地はにぎわいを見せますが、周辺エリアでのビルの建設や中心市街地に人が集まるため交通渋滞が発生します。商業施設や既存の商店街などが共存できるのかどうかも大きな問題です。人の流れが一方的になれば、中心市街地以外には人が集まらなくなってしまいます。

公共交通網と車利用の共存

郊外型の生活は、自動車の利用が必須です。中心市街地では、駐車場や道路が狭くなっていたり、常に交通渋滞が発生したりします。過疎化により鉄道やバスによる公共交通網がなくなってしまった地域では、車に代わる便利な移動手段が必要です。自動車は一人一人が所有するような地域であれば、再び鉄道やバス、ライトレールなどの公共交通システムに投資しなければなりません。多額の資金を投入したけれど、やはり自動車のほうが便利だったということもあります。中心市街地から離れた方でも便利に利用できるような公共交通網を構築しなければなりません。

まとめ

人口減少社会の切り札として、再びコンパクトシティを目指す動きが各自治体で高まっています。札幌市、青森市、仙台市、富山市、神戸市、北九州市では政策として公式に取り入れられています。しかし、これまでに成功してきた都市やうまくいっていない都市もあります。各都市ごとに特殊な事情もあってか、計画段階からなかなか実行段階にまで進まないケースもあります。海外や日本での成功事例をよく考慮したうえで、導入前も導入後も住民への理解と調整を粘り強く続けるしかないでしょう。

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