マイホームの住宅ローンを運よく早めに完済できた人は、悠々自適な生活が待っているのでしょうか?実際のところはそうではないようです。古くなったマイホームの大規模修繕費用や売却の検討、老後資金のための貯蓄など、別の心配をしなければならないことが次第に明らかになってきます!
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住宅ローンはできる限り早めに完済すべき
住宅ローンを組んでマイホームを購入した人は、繰上げ返済を実施し、15年以内で完済しているケースが多いことがわかっています。一般家庭の支出は、住宅ローンばかりではありません。お子さんがいる場合は、教育費も大きな支出項目です。住宅ローンは、20年や30年といった長期間の設定が多く、実際には定年退職する前に完済しており、老後資金の貯蓄を始めていなければなりません。こうした点に気づいた方は、住宅ローンの繰り上げ返済を積極的に行い、定年前に完済するようになっています。
住宅ローン完済は平均で15年以内の現実
住宅金融支援機構の調査では、3人に1人が10年以内に住宅ローンを完済していることがわかっています。一生住宅ローンに縛られている人はそれほどいないということです。平均すると完済までは15年以内といった調査結果も出ています。
住宅ローンを15年以内に完済する、ということは、65歳定年までには遅くても50歳でマイホームを購入し15年以内で住宅ローンを完済できる計画を立てて住宅を購入しても問題ありません。新築であれば定年後は築15年になっています。その後、15年近く住んでも中古住宅としては十分に住めるお住まいとして残ります。
実際には、教育資金や老後資金の貯蓄も必要ですので、若い世代のうちに住宅を購入し、早期に返済を終えて、教育資金や老後資金を準備するような計画になります。住宅ローンは、借りるときは長期に設定して月々の返済負担を軽くしたうえで、ボーナス時やお金が余ったときにこまめに繰り上げ返済を行うことで、より短期間で完済することができます。
繰上げ返済を優先し、一括返済を利用する
住宅ローンの早期返済は、一部繰上げ返済を活用すれば、毎月の家計が苦しいときがあっても、無理なく返済を続けることができ、なおかつ早期完済につなげることができます。
貯蓄を続け、まとまったお金ができたら、繰上げ返済を実施しましょう。繰上げ返済をする場合にも計画的に返済しなければ、毎月の家計が赤字になってしまいますので注意してください。
借り換えを行うと得をする場合
借り入れ時から10年以上が経過している場合、当時の住宅ローンの金利が今よりも高かった場合は、借り換えにより支払う利息が減る場合があります。
しかし、50~70万円の借り換えに関する手数料が発生します。必ず金利差を計算し、借り換えにより支払う利息が減らない場合は、借り換えをすればデメリットになることもあります。
抵当権抹消手続きは忘れずに
住宅ローンの返済が終わった後は、抵当権抹消の手続きを行います。住宅ローンを完済しても登記簿には抵当権の記載が残ったままです。自分で手続きを行う場合は、金融機関から必要書類を受け取り、法務局で抵当権の抹消登記手続きを行います。
金融機関に任せる場合は、司法書士に対する報酬や登録免許税などの費用を支払い、専門家の指示通りに必要書類を提出します。
住宅ローン完済後の抵当権抹消手続き
住宅ローンを完済した後、必ずやらなければならない残された手続きがあります。それが、抵当権抹登記の手続きです。登記簿に抵当権がついたままですと、まだ住宅ローンが終わっていない不動産物件であると思われてしまいます。競売にかけられることはありませんが、書類上の手続きはきちんと済ませておきましょう。
自分でもできる抵当権抹消手続き
不動産の登記簿に記載されている抵当権には、借入年月日、借入金額、借入先などが記載されています。不動産の登記簿から抵当権を外す手続きを行います。自分でする方も多く、金融機関から必要な書類を受け取り、管轄の法務局で抵当権抹消登記の手続きを行います。ご自身が指定した司法書士に依頼しても構いません。自分でやる場合は、土地と建物に対する登録免許税がかかります。
登記が完了すれば、「登記完了証」が発行されます。
抵当権抹消登記は、「登記・供託オンライン申請システム」を使って申請することができます。
抵当権抹消登記に必要な書類と費用
抵当権抹消登記に必要な書類は、
抵当権抹消登記申請書、
登記原因証明情報、
銀行が作成した委任状
登記識別情報または登記済証(抵当権設定契約証書)
となります。
登録免許税は、不動産一つにつき1000円です。土地と建物で計2個になっています。
他には、司法書士に依頼する手数料や諸費用が必要です。5千円~2万円ほどかかります。
住宅ローン完済後は貯蓄や投資に励む
住宅ローンを完済し、不動産の抵当権抹消登記が完了したら、住宅ローンの重荷から解放されます。好きなものを購入したり、旅行や外食も以前よりも高価なものへと変わったりすることがあります。
しかし、住宅ローン完済後もやはり貯蓄や投資に励み、よほどのお金持ちではない限り節約する生活が続くと考えてください。
返済に回していたお金は貯蓄や投資に
早期に繰上げ返済が完了できた方は、幸せかもしれません。とはいえ、お子さんがいる場合はこれから教育資金もかかりますし、老後資金の貯えも始めなければなりません。
ローン返済に充てていたお金は、今度は貯蓄や投資に回す必要があります。リタイア後は収入が激減します。住宅ローンのおかげで十分な貯蓄や資産形成ができなかった方は、住宅ローンの返済分をそのまま貯蓄や資産形成に充てるようにしましょう。年金に加えて老後に必要な資金を再計算してください。さらにお子さんがいる場合は、その中から教育資金を捻出する必要があります。
住宅ローンの返済が終わった後も、古くなったマンションは管理費や修繕積立金の支払いが続きます。古い戸建住宅でも固定資産税やリフォーム・メンテナンス費用がかかっていきます。
このように住宅ローン完済後も、お住まいに関しては毎月一定額の貯蓄が必要だということになります。
ローン完済後も妻は働くほうがいい
共働きで住宅ローンの繰上げ返済を頑張ってきたご夫婦は、住宅ローンの早期完済時期が早まります。
しかし、住宅ローン完済後も旦那の稼ぎだけではなく、妻も働いて稼ぐほうがいいでしょう。
その理由は、先にもご説明したように教育費と老後資金の問題があるからです。お子さんが大学へ進学する場合は、生まれてから22年間は教育費がかかります。そのため、住宅ローンの返済と教育費の負担が大きく、老後資金の貯蓄ができていないご家庭がほとんどです。将来は年金が減る可能性が高く、もらえる年齢も上がっています。妻も働くことで、旦那の収入減を補うことができ、リスク分散にもなります。資産運用も重要ですが、働いて稼げる状態なら年金や貯蓄が少なくても生きていくことができます。節約には限界がありますので、複数の収入源を増やしておくべきでしょう。
住宅ローンが老後までに完済できない場合の悪いシナリオ
定年後も住宅ローンが残ってしまうケースも少なからず存在します。それよりも、35年長期の住宅ローンを組んでいる方は要注意です。30歳でマイホームを購入しても65歳でやっと住宅ローンが完済するからです。それまでに老後資金の貯蓄ができなかった人は、老後貧乏になってしまうかもしれません。
定年後も住宅ローンが残る
35年住宅ローンを組んだ方は、早期繰上げ返済ができないと65歳以降も住宅ローンの返済が続きます。60歳以降も今の収入が続く方は少なく、年齢と共に収入が減っていくことが予想されます。50歳代でリストラに遭ってしまえば、繰上げ返済どころか、返済原資を捻出することも難しくなります。老後資金の準備もできません。年金収入があっても、住宅ローンが残っていると豊かな老後生活はできないでしょう。住宅ローンが減っているなら、早期に売却して、今よりも安い賃貸物件に住み、売却代金は老後資金に充てたほうがいい場合があります。
退職金で住宅ローン完済
退職金で住宅ローンを完済すると、老後資金の準備ができません。退職金の額にもよりますが、手厚い退職金が支払われる会社は大企業にお勤めの方しかいないはずです。それよりも、高額の住宅ローンが組めたことに感謝し、老後はそこそこの年金収入で夫婦二人、慎ましやかな生活を楽しむべきでしょう。
65歳以降は年金で返済する老後貧乏
年金収入が手厚い大企業や公務員の方は、年金収入で住宅ローンを返済することができます。これまでのように旅行や交際費にお金を使っていると赤字になるケースがほとんどです。住宅ローンの返済を優先しつつ、食費、光熱費、通信費などの日常の生活費を節約する必要があります。貯蓄の取り崩しが始まりますので、年金収入に頼る生活では、それ以上貯蓄できないことに注意しましょう。
完済できずに破産するケース
住宅ローンを滞納し、破産に至る方もいらっしゃいます。その原因は、低所得によるもの、病気や医療費、負債の返済などですが、一部ギャンブルや浪費なども含まれています。住宅ローンを完済するまで、無駄なお金を使わない、クレジットカードは使わないなどの節制が必要です。中高年以降に多い病気に対する備えは、医療保険やがん保険に加入してリスクを減らしておきましょう。収入が激減した場合でも、夫婦のどちらかが働いたり、事前に収入保障保険に加入したりするなどのリスクに対する事前対策が重要です。
まとめ
よほどのお金持ちではない限り、マイホームの住宅ローン完済後の生活もやっぱり貯蓄に励む必要があります。豊かな老後生活資金や教育に関する費用はいくらあっても足りなくなるはずです。今から節約や貯蓄に加えて投資も始め、住宅ローン完済後も無理せずに仕事を続けることで、住宅ローン滞納による破産や老後貧乏を防ぐことができます。