空家法が制定され、施行されたのが、2015年です。具体的な空家対策は、各市区町村で制定される「空家等対策計画」にかかっています。
空家法についての基本知識
空家問題は、喫緊の課題でした。すでに平成26年の11月に空家等対策特別措置法が成立しており、空家の調査、特定空家の指定、助言、指導、勧告、命令、罰金の徴収や行政代執行ができるようになっています。
空家は、1年以上人の出入りがなく、電気・ガス・水道などの使用実績のない建物として判断されています。
ご自身では空家と思っていない場合でも、行政からの指導があれば、迅速に対応するという意思表示がなければ、特定空家として認定されてしまいます。
そうならないように、定期的に適切な空家の管理が必要となります。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」
空家法は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」や「空き家対策特別措置法」といった正式名称です。
空家は今後も増えると予想されています。住宅ではなく、古いビルや建物であっても、管理されていない看板が強風で飛ばされり、落下したりすると、関係のない歩行者にもケガをさせてしまうことがあります。
他にも外壁の剥離飛散、屋根瓦の落下、門や塀の老朽化による倒壊、ごみの不法投棄、窓ガラスの破損、不法侵入や衛生上の問題、害獣や害虫の増加など、手入れされない空家は、それだけでとても危険な存在となります。
東京都内以上に地方都市では、人口減少と世帯数の減少が続いており、今後も空家が増えることから、空家法が迅速に制定・施行され、各自治体ではすでに実行に移されているという状況です。
空家法の対象となる空家と「特定空家」
空家の中でも特に問題とされるのが「特定空家」です。空家法でも全ての空家が行政指導の対象になるわけではなく、周辺への影響が大きな空家に絞って「特定空家等」と定義し、各市区町村の判断に任されています。
特定空家等とは、
倒壊や保安上の危険性の高い空家、衛生上有害となる恐れが強い空家、景観が損なわれていると判断され管理されていない空家、周辺の生活環境の保全を図る必要があり不適切な状態にある空家などが該当します。
人が住まなくなり、管理されなくなった空家は、特定空家に指定される恐れが強い空家です。
行政指導を受けないための措置
空家を所有していて、管理せずに放置していると、いずれは行政指導や命令の対象になるはずです。
人が住まなくなった空家は、売却するか、賃貸に出すか、定期的な管理を依頼するしかありません。
行政指導を避けるために、最も安い値段で管理する方法は、有料の管理代行サービスを活用することです。
月1回の巡回を代行しており、1万円程度の費用がかかります。それでも、空家までの交通費や往復の時間、清掃や手入れの手間などを考えれば、有料であってもコスパに見合う管理代行サービスが登場しています。
その他、補助を受けて解体して更地にする方法もあります。
2018年の空家対策の現状
空家法が施行されたのが、2015年です。最新の情報でも2017年までの情報が確かなものです。つまり、空家対策が本格的に開始してから、まだ2年程度しかたっていないことになります。
それでも「空家バンク」などが登場し、各市区町村でも具体的な対応策を策定し、特定空家に該当した場合は、実際に助言・指導、勧告、命令、代執行が行われています。空家問題に対する各市区町村の対応も迅速化しており、空家問題解決も予想以上に進んでいます。
空家・空地の管理を頼む
空家や空地でも、所有者が適切な管理をしていれば、何も問題ありません。空家を放置する方が増えているので、近隣住民を困らせていたということです。空家管理が義務付けられたことにより、行政の罰金や代執行の措置が増えています。
特に特定空家に指定されると、固定資産税の優遇がなくなり、通常の最大6倍にまで上がってしまいます。こうした法律により、何もしなければ、空家の管理コストが上がってしまうようになっています。
ご自身で管理できない場合は、月1回でも建物の管理・清掃の代行を行うサービスを利用したほうがいいでしょう。
100円管理サービスも登場し、建物を目視点検して写真付きで巡回報告をしてくれる業者があります。清掃やメンテナンスはご自身で行うのなら、こうした割り切った格安サービスも利用可能です。
空家バンクの整備
空家バンクも始まっており、整備が進んでいます。空家バンクは、空家の賃貸や売却を希望する人の情報を集め、空家の利用を希望する人に紹介する制度のことです。
主に市区町村が運営しており、空家の有効活用を通じて、定住促進による地域の活性化を目指しています。
※問い合わせ先も各市町村の担当窓口になっています。
これまでの特定空家の指定と助言・指導実績
国土交通省が発表した調査結果(平成29年3月末)によると、全市区町村の約21%が空家等対策計画を策定済みで、平成29年度末には、その割合も5割を超えることがわかっています。
2017年3月末までの調査では、特定空家に該当し、助言・指導を行ったケースは、6405件です。
このうち勧告が267件、命令が23件、代執行に至ったケースは11件でした。
現在も指導中という空家が多く、空家問題に向けての各自治体の取り組みは急速に進んでいるものとみていいでしょう。
続々と策定される空家等対策計画の例
空家対策特別措置法は、今後増えると予想される空家に対する事前対策として導入され、今後もより一層の対策の強化が求められています。その理由も少子高齢化対応や税制面での優遇などの法律により地方の空家対策をバックアップするためです。
空家対策特別措置法では、基本方針を定め、市町村では具体的な施策が策定されています。それが「空家等対策計画」ということになります。
すでに5割を超える市区町村で策定済み
空家等対策計画は、空家法を受けて、各市区町村が空家等対策計画を策定するものです。
国土交通省の調査によると、平成29年3月末時点では、全市区町村の約21%が策定済みです。今後の策定予定を含めると、平成29年度末には5割を超える見込みになっています。
続々と各市区町村において、空家等対策計画が策定されていますので、代表的な都市の空家等対策計画をご紹介します。
埼玉県新座市
埼玉県新座市でも平成28年8月に空家等対策計画が策定されました。
空家等に関する窓口は、交通防犯課になっています。
空家に関する条例の改正も行われています。
管理されていない空家が原因で他人に損害を与えた場合は、所有者の責任が問われます。
建物の点検、屋内の換気や清掃、草木の除草・剪定を定期的に行うよう適切な管理を推奨しています。
京都府京都市
京都市でも空家等対策計画が策定されています。
都市計画局のまち再生・創造推進室が問い合わせ先です。
京都市では、空家の発生の予防、活用・流通の促進、適正な管理、跡地の活用に関する取り組みを重視しています。
空家対策に取り組む学区は、最終的に全学区を目指します。
流通していない空家の数を5万5千戸に抑える目標を打ち出しています。
通報があった管理不全となった空家は迅速に指導を行い、指導による100%の解決を目指しています。
北海道札幌市
北海道札幌市でも空家対策が始まっており、2016年には「札幌市空家等対策計画」が策定されています。
計画では、特定空家の除却・解体件数、是正件数、空家の活用件数などについての成果指標を定めており、市民とスクラムを組んで、現在も積極的に取り組んでいます。
財政上の支援措置が受けられる事業もあります
空家法に関する財政上の支援措置があります。ここで紹介する事業では、費用の一部を国が補助しています。
財政上の支援措置は、今後も継続されるかどうかはわかりませんし、新しい制度が始まる場合もありますので、常に最新情報に目を向ける必要があります。
「空き家再生等推進事業」
これは、空家の活用や除却を促進する自治体の取り組みを支援する事業です。
空家を解体したり、リフォームして再利用する場合に、国や自治体の補助金や助成金が受けられます。
除却事業タイプは、最大で80%の補助が受けられます。
活用事業タイプでは、最大で改修工事費の3分の2の補助が受けられます。
「空き家対策総合支援事業」
民間事業者等と連携した総合的な空家対策への支援を行う事業です。
空家の耐震リフォームや除却に発生する費用を支援します。上限は250万円で、標準工事費の10%を所得税から控除することができます。
「先駆的空き家対策モデル事業」
こちらは、専門家等と連携して実施する空家対策の先駆的モデル事業を支援しています。
ノウハウの蓄積が十分ではない事務や官民が協力して取り組む事業で先駆的に実施される取り組みを支援しています。
この支援により、空家対策モデル事業がうまくいけば、全国へ展開されます。
空家の発生防止、相談事例の収集と体制の構築、空家活用や流通促進において、複数の企業、団体、自治体がさまざまな取り組みを行っており、事業成果も公表されています。
「空き家所有者情報提供による空き家利活用推進事業」
こちらは、民間事業者と連携して空家所有者情報を活用する空家利活用の取り組みを支援しています。
平成29年度は、一次募集と二次募集があり、合計で10団体が選ばれており、事業成果も公表されています。
民間事業者と連携して空家所有者情報を活用するモデル的な取り組みを行う市区町村に対して、国がその実施にかかる費用の一部を補助しています。
まとめ
各市区町村で策定される空家等対策計画は具体的な空家対策の第一歩です。
空家法が制定され、施行されたのが2015年と新しく、まだ2年しか実績はありませんが、具体的な空家対策が進んでいます。
それは、各市区町村で制定される「空家等対策計画」に沿って行われています。
空家法の基礎知識と空家対策の現状の他、具体的な市区町村の空家等対策計画、財政上の支援措置などについて取り上げました。